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目標を2か月に設定 [第1章「なぜ2か月なのか」]

新型インフルエンザに対し、国は「最低限(2週間程度)」の備蓄を推奨しています。その根拠は明らかではないものの、この病気が流行すると食料の生産、流通、小売りが機能を失う上、外出の自粛が求められます。このために、「食料が買えなくなるかも知れない期間」が出ることは農水省の備蓄ガイドに示されています。「最低2週間」はこの期間に対応した設定だろうというのが、前回までのおさらいです。

では、 「最低限」ではなく「望ましい」備蓄の期間はどのくらいなのでしょうか。国が示していないので、自分で考えるしかありません。

2007年秋に上梓された「H5N1型ウイルス襲来」(岡田晴恵著、角川SSC新書)は、当初、大きな反響を呼びました。国立感染症研究所研究員(肩書きは当時)というこの問題の専門家が、平易に新型インフルエンザの恐ろしさを解説した入門書だったからです。この本の中に手がかりがあります。

同書は日本で実際にパンデミックが起きることを想定して、場面ごとに解説しています。それによると、

1)海外で発生したら数日(場合によっては2、3日)で日本にやってくる

2)国内で流行したら、流通は停滞し、場合によってはストップしてしまう

3)感染を防ぐためにはできるだけ外出は避けるほうがいいし、政府もそのように呼びかける

4)従って「お金があっても食糧や日用品が買えない事態」が起きうるし、それに備える必要がある

と展開した上で、

「最低2ヶ月程度は買い物のために外出しなくても生活が続けられるだけの備蓄品を用意しておくことをおすすめします」

と明記しています。その根拠としては、「ひとたび新型インフルエンザが流行してしまったら、過去の流行の事例から、最初の流行は六〜八週間続くと考えられています」としています。

これまで見てきたとおり、6〜8週間という流行の期間は政府の想定と同じです。しかし、必要な備蓄の期間は政府が「最低2週間」、岡田さんは「最低2か月」と、4倍も違っています。

どうしてこれほどの差が出るのでしょうか。

東日本大震災後、政府の地震や原発の被害想定が甘すぎるという批判が噴出しました。

確かに実際に起こってみると「甘い」ことは明白なのですが、しかしながら、国民や住民の命や財産を守る立場の国や自治体が、「備えができないほどの大きな被害想定」を平時に示すのは極めて難しい作業だと思います。想定を出した以上、それに備えるのが仕事であり、備えられない想定を出すことは、自己否定につながるからです。責任放棄と言われるリスクもあります。

つまり、政府や自治体の想定には常に「過小評価バイアス」がかかっているというのが筆者の見立てです。一方で、岡田さんの記述は「警鐘を鳴らす」という職業的な役割から、むしろ最悪の事態を想定した対応を求めていると推測します。

であれば、岡田さんが「最低ライン」としている2か月の備蓄当たりが、ちょうどいい頃合いではないかと思います。現実的にも、よほどの広い家ではない限り、2か月分の備蓄というのは限界に近いものがあります。

当ブログはすでに、首都直下型地震について、望ましい備蓄期間を「1か月」と定めました。しかし、前回のブログに記した通り、一般家庭にとっては、備蓄の量や中身は震災にもパンデミックにも対応できないと、現実的ではありません。そこで、当ブログとしては、地震もパンデミックも含めた最適な備蓄量の目標を「2か月」分と定めることにします。

これで「第1章」は終了です。次回以降、備蓄の「中身」の議論に入っていきたいと思います。

 


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