M8の震災、30年以内に30%の確率 [雑談]
すでに大きく報道されていますが、当ブログを展開する上でのいわば基礎データとなる大震災の発生確率が見直されました。
当ブログで検討の対象にしている「首都直下地震」とは地域が異なりますが、見直しの方向性は同じなので、参考になると思います。
「M8地震、30年以内に30%…三陸から房総沖」というヘッドラインがついた読売新聞の報道(http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111125-OYT1T01087.htm)によると、「『三陸沖北部―房総沖の海溝寄り』の領域では、今後30年以内に津波を伴うマグニチュード(M)8級のプレート(岩板)境界地震が起きる確率は30%となり、震災前よりも10ポイント程度高くなった」ということです。
ただし、「今回は従来の手法での暫定的な改定値」だそうで、評価手法そのものも今後見直すのだそうです。
一方、毎日新聞によると、22日に政府の「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」が開かれ、席上、内閣府が東日本大震災発生時の帰宅困難者は、首都圏で約515万人に上ったと推計されることを明らかにしたそうです。
「内閣府は10~11月、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城南部で大震災時に外出していた5372人などへの調査を実施。1527人(28%)が当日中に帰宅できなかったことから、計約515万人が帰宅困難者になったと」推定しているのだとか。
内訳は「東京都約352万人、神奈川県約67万人、千葉県約52万人、埼玉県約33万人、茨城県南部約10万人」「帰宅手段は「徒歩」が37%と最多で、通常の14%から大幅に増えた」とのことです。 また、「帰宅困難者が発生した158区市町村への調査では、50区市町村が今も帰宅困難者対策を検討していないこと」も判明したとのことです。
2005年の想定では、M7.3の首都直下地震による帰宅困難者は650万人が見込まれています。しかし、東日本大震災でも515万人もの帰宅困難者が出ていたことを考えると、そんな数字でとても収まらないと思われます。早期の想定見直しが必要だと思います。
これが政府推奨、「4人家族×2週間」リストだ [第3章「農水省備蓄ガイドを読む」]
第1章では「食料備蓄の量は、2か月分を目標に置く」ことを決めました。
震災対応としては1か月分で足りると判断しましたが、より混乱が長引きそうなパンデミックに対応するためには、2か月分が適正と考えました。
第2章では、これに加えて、
・自宅が倒壊・崩壊しない
ことを前提としつつ、
・備蓄スペースを確保する観点から、必要な栄養は確保しつつ、重量は最小化する
・水道、電気、ガスの代替手段も確保する
の2点を目標に定めました。
第3章からは、望ましい備蓄の中身を考えていきます。参考書は、農水省が公表している「新型インフルエンザに備えた家庭用食料品備蓄ガイド」です。ウェブサイトから簡単にダウンロードできます。
まず、推奨メニューを見てみましょう。両親と男女の子供2人の計4人家族が2週間を暮らすためのリストです。2週間というのは、政府が「最低限必要」としている量です。
ここまで具体的にメニューを紹介しているのは、素晴らしいことだと思います。イメージが浮かぶので、色々なことが実感できます。
まず、米を備蓄の基本に置いているのは、大変に参考になります。
震災対応のいわゆる「非常食」ですと、乾パンやレトルト食品などが中心になってしまいます。しかし、2週間分を構えようと思えば、購入費、保管場所、賞味期限切れへの対応など、いずれの観点からも、日頃食べている日常食を軸に考えるのは当然です。
まして、当ブログの目指す2か月分(約8週間分)となれば、「非常食」に頼るのは不可能です。
次に、必要量の多さに驚かされます。例えば缶詰は、30缶(魚介類、肉類)+20缶(野菜、きのこ類)+10缶(果物類)=60缶が求められています。
2か月分ですとこの4倍ですから、60缶×4=240缶も揃えなくてはなりません。同様に米は10×4=40キロ、卵は10個×4=40個を常に持っておくことになります。
リストの中に、生野菜や冷凍食品もあります。パンデミック対応メニューなので、基本的には停電を想定していないためです。
ただし、停電については、次のような記述もあります。
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政府の想定では『保守・運用の従業員不足により地域的・一時的に停電等が生じるおそれ』があることも指摘しています。このため、ある程度の期間の停電等に対処する方策についても合わせて考えておく必要があります。
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実際、ライフラインがストップした場合の3日分の非常食メニューも記載しています。
どうでしょうか。 先程まで見てきた2週間分の備蓄も合わせると、一般家庭が用意するには、容易ならざる量ではありませんか。
筆者は、3日程度であれば、仮に水道も電気もガスも全部止まったとしても、追加的に乾パンやレトルトごはんなどの非常食を準備する必要はないと思います。
冷蔵庫には生野菜や冷凍ものがあるし、米だってその他の缶詰だってたくさんあるからです。調理は工夫すれば、備蓄した水とガスボンベで3日分持ちます。
次回は栄養面を考えたいと思います。
備蓄の「ユニバーサルデザイン」 [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]
当ブログは、古い木造住宅の住民には役立たないかも知れません。
狙いとするところは食料備蓄の最適化ですが、備蓄うんぬんより先に「自宅が焼けちゃったり、崩壊したりしない」ことが前提だからです。どんなに備蓄していても、それが焼失したり、自宅が危険で立ち入れなかったりしては、意味をなしません。
もしも耐震性や耐火性に不安があるようなら、まずはそちらに対応するべきだと思います。
この観点から考えると、マンション住まいは
①備蓄のスペースが狭い(ケースが多い)
②躯(く)体の中を通るライフライン(給水管、ガス管等)が損傷すると復旧に長期間かかる
③停電時にエレベーターが動かず、身動きが取れなくなる(特に高層階)
というハンデがある一方、
①1981年6月施行の新耐震基準に準拠していれば、相当な震災でも崩壊・倒壊はしない
②火事に強い
という強力な利点もあるというのが前回までの結論でした。
逆に言えば、火災や崩壊の恐れがない前提なら、一戸建てはマンションよりもかなり有利だと言えます。そこで、当ブログでは以後、マンション住民を想定して、望ましい備蓄のあり方を考えたいと思います。条件が悪いマンション住民に望ましいことは、一戸建て住民にとっても望ましかろうからです。備蓄の「ユニバーサルデザイン」みたいなものです。
そこで、改めてマンションの不利な点を眺めてみます。
①のスペースの問題は、備蓄の量を最小化することで対処できそうです。
②のライフラインの問題は、水道やガス、電気の代替手段を長期にわたって確保する手段を見つけることでなんとかなりそうです。
③の高層階については、これはどうしょうもありません。エレベーターの代替手段を個人で準備するのは不可能です。
これらを踏まえ、当ブログでは、次の二つの方針を構えたいと思います。
・必要な栄養分を確保しつつ、備蓄の総重量をなるべく少なくする
・水や電気、ガスが長期に渡りストップした場合でも対応できる手段を確保する
これで第2章は終わりです。
第3章では、農水省がパンデミック対策で推奨している食料備蓄のガイドを参考にしながら、望ましい備蓄の中身を考えていきたいと思います。
木造住宅と想定死者数の関係 [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]
前回のブログでは大震災時に際しての、マンション暮らしのデメリットを指摘しました。今回は逆に、マンションのメリットを考えてみます。当方、専門家ではないので、色々と調べたものをもとに、思いを巡らせてみます。
まず思い浮かぶのは、耐震性です。1981年6月の建築基準法施行令改正で定められた「新耐震基準」のマンションは
・震度5程度の地震が起きても建物に大きな損傷を与えない
・震度6強から震度7程度でも人命を奪うような崩壊・倒壊に至らない
ことを求められています。躯(く)体が強靱であるということです。
阪神・淡路大震災では、震災による死者6434人中、8割近くが建物の倒壊による犠牲だったとのことです。「崩壊・倒壊しない」ということが、いかに大切かがわかります。
基準を満たせば、マンションも一戸建ても同じに思えますが、そうではありません。
一戸建て主流の木造について、「日本の一般的な木造住宅は約30年が寿命とされ、今、耐震基準を満たしている建物も、いずれは耐震性が劣化する」 (2007年1月17日付け読売新聞)という指摘があります。この点、マンションはもともと強いく体を持つ上に、通常は修繕積立金を積んで、大規模改修に 備えていますので、計画的な補修等が可能です。
木造住宅も耐震補強に備えて、修繕積立金を積んでおくべきと警告する専門家もいます。
もう一つのマンションのメリットは、耐火性だと考えます。
阪神・淡路大震災で、木造家屋が密集している地区で火災が拡大して、大きな犠牲がでたことは記憶に新しい(といっても、もう16年も昔のことになりましたが)ところです。
自宅の耐火性が強くても、密集した木造住宅街にあれば、類焼する可能性もあります。自宅に火が回らなくても周囲が燃えていれば、水をかぶるなどの影響を受けます。
この点、マンションは素材そのものが燃えにくいし、火災覚知器やスプリンクラーなどの消火設備もあります。木造住宅地よりは火に強いのは明らかだと思います。
以下は、東京都が公表している首都直下地震の被害想定をもとに、筆者が加工したグラフです。
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緑地は、木造住宅の軒数です。濃いほど、木造住宅数は多くなります。
○の大きさは想定される死者数です。
木造住宅が多い区ほど、死者数が多い傾向が見て取れると思います。
住宅が崩壊・倒壊したり、火事になってしまったら、食料備蓄は意味を失ってしまいます。このことから考えると、マンションは一戸建てに比べて有利とも考えられます。マンション住民は安心して備蓄ができるともいえます。
三重苦のマンション [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]
大破 | 中破 | 小破 | 軽微 | 損傷なし | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
新基準前 | 35 | 26 | 86 | 413 | 677 | 1237 |
新基準(1981年以降) | 10 | 29 | 124 | 738 | 958 | 1859 |
大破 | 中破 | 小破 | 軽微 | 損傷なし | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
新基準前 | 2.8% | 2.1% | 7.0% | 33.4% | 54.7% | 100.0% |
新基準(1981年以降) | 0.5% | 1.6% | 6.7% | 39.7% | 51.5% | 100.0% |
古いマンションと高層階の住民は特に、注意が必要だと思います。