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第2章「住むならマンション?一戸建て?」 ブログトップ

備蓄の「ユニバーサルデザイン」 [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]

当ブログは、古い木造住宅の住民には役立たないかも知れません。

狙いとするところは食料備蓄の最適化ですが、備蓄うんぬんより先に「自宅が焼けちゃったり、崩壊したりしない」ことが前提だからです。どんなに備蓄していても、それが焼失したり、自宅が危険で立ち入れなかったりしては、意味をなしません。

しも耐震性や耐火性に不安があるようなら、まずはそちらに対応するべきだと思います。

この観点から考えると、マンション住まいは

①備蓄のスペースが狭い(ケースが多い)

躯(く)体の中を通るライフライン(給水管、ガス管等)が損傷すると復旧に長期間かかる

停電時にエレベーターが動かず、身動きが取れなくなる(特に高層階)

というハンデがある一方、

①1981年6月施行の新耐震基準に準拠していれば、相当な震災でも崩壊・倒壊はしない

②火事に強い

という強力な利点もあるというのが前回までの結論でした。

逆に言えば、火災や崩壊の恐れがない前提なら、一戸建てはマンションよりもかなり有利だと言えます。そこで、当ブログでは以後、マンション住民を想定して、望ましい備蓄のあり方を考えたいと思います。条件が悪いマンション住民に望ましいことは、一戸建て住民にとっても望ましかろうからです。備蓄の「ユニバーサルデザイン」みたいなものです。

そこで、改めてマンションの不利な点を眺めてみます。

①のスペースの問題は、備蓄の量を最小化することで対処できそうです。

②のライフラインの問題は、水道やガス、電気の代替手段を長期にわたって確保する手段を見つけることでなんとかなりそうです。

③の高層階については、これはどうしょうもありません。エレベーターの代替手段を個人で準備するのは不可能です。

これらを踏まえ、当ブログでは、次の二つの方針を構えたいと思います。

・必要な栄養分を確保しつつ、備蓄の総重量をなるべく少なくする 

・水や電気、ガスが長期に渡りストップした場合でも対応できる手段を確保する

これで第2章は終わりです。

第3章では、農水省がパンデミック対策で推奨している食料備蓄のガイドを参考にしながら、望ましい備蓄の中身を考えていきたいと思います。


木造住宅と想定死者数の関係 [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]

前回のブログでは大震災時に際しての、マンション暮らしのデメリットを指摘しました。今回は逆に、マンションのメリットを考えてみます。当方、専門家ではないので、色々と調べたものをもとに、思いを巡らせてみます。

まず思い浮かぶのは、耐震性です。1981年6月の建築基準法施行令改正で定められた「新耐震基準」のマンションは

・震度5程度の地震が起きても建物に大きな損傷を与えない

・震度6強から震度7程度でも人命を奪うような崩壊・倒壊に至らない

ことを求められています。躯(く)体が強靱であるということです。

阪神・淡路大震災では、震災による死者6434人中、8割近くが建物の倒壊による犠牲だったとのことです。「崩壊・倒壊しない」ということが、いかに大切かがわかります。

基準を満たせば、マンションも一戸建ても同じに思えますが、そうではありません。

一戸建て主流の木造について、「日本の一般的な木造住宅は約30年が寿命とされ、今、耐震基準を満たしている建物も、いずれは耐震性が劣化する」 (2007年1月17日付け読売新聞)という指摘があります。この点、マンションはもともと強いく体を持つ上に、通常は修繕積立金を積んで、大規模改修に 備えていますので、計画的な補修等が可能です。

木造住宅も耐震補強に備えて、修繕積立金を積んでおくべきと警告する専門家もいます。

もう一つのマンションのメリットは、耐火性だと考えます。

阪神・淡路大震災で、木造家屋が密集している地区で火災が拡大して、大きな犠牲がでたことは記憶に新しい(といっても、もう16年も昔のことになりましたが)ところです。

自宅の耐火性が強くても、密集した木造住宅街にあれば、類焼する可能性もあります。自宅に火が回らなくても周囲が燃えていれば、水をかぶるなどの影響を受けます。

この点、マンションは素材そのものが燃えにくいし、火災覚知器やスプリンクラーなどの消火設備もあります。木造住宅地よりは火に強いのは明らかだと思います。

以下は、東京都が公表している首都直下地震の被害想定をもとに、筆者が加工したグラフです。

木造数と死者数.JPG

↑クリックしてください。大きくなります

緑地は、木造住宅の軒数です。濃いほど、木造住宅数は多くなります。

○の大きさは想定される死者数です。

木造住宅が多い区ほど、死者数が多い傾向が見て取れると思います。

住宅が崩壊・倒壊したり、火事になってしまったら、食料備蓄は意味を失ってしまいます。このことから考えると、マンションは一戸建てに比べて有利とも考えられます。マンション住民は安心して備蓄ができるともいえます。


三重苦のマンション [第2章「住むならマンション?一戸建て?」]

前回までの「第1章」では、食料備蓄の量について、目標を「2か月」と決めました。次に定めるべきは備蓄の中身なのですが、その前に考えておきたいことがあります。居住形態についてです。
 
当ブログは首都圏住民を対象にしていますが、特にマンション住民を意識しています。その理由は、自分も含め、首都圏では多くの住民がマンション暮らしをしているからです。
 
一般的に言って、マンションでの備蓄には、一戸建てに比べて以下のような制約があります。

第一に、スペースの制約です。一戸建ては地下室や屋根裏も作れるし、庭があれば小屋や倉庫も置けます。しかし、マンションの場合は、よほどの大型物件でもない限り、備蓄にさける面積は限られてしまいます。増改築は困難です。

第二に、設備面の制約です。マンションの場合は、水道、ガス、電気などのインフラ設備を共用していますので、震災後、周囲のインフラが復活したとしても、マンションの躯(く)体内でインフララインが壊れてしまうと、復旧が遅れます。インフラが回復するまでの期間が長くなれば、その分、備蓄も多目に持つ必要があります。

第三に、エレベーターが止まる制約があります。高層階では特に、震災後には通常の生活が難しくなります。備蓄があったとしても、煮炊き用の燃料や水を運んだりすることができなくなる恐れがあるのです。

当ブログの2回目(http://foodstock.blog.so-net.ne.jp/2011-08-20-1)に記したように、中央防災会議のシミュレーションによると、東京湾北部地震(マグネチュード7.3)で震度 6 弱以上の地震動が予測される市区町村は、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城各都県で144 市区町村もあります。

震度と被害の関係を示す「気象庁震度階級関連解説表」によると、震度6弱は、鉄筋コンクリートの建造物であっても、「耐震性の低い建物では、壁や柱が破壊するものがある。耐震性が高い建物でも、壁、梁(はり)、柱などに大きな亀裂が生じるものがある」という被害が出ます。マンションの耐震性が高くても、一定の被害は覚悟するべきなのです。

中高層住宅(マンションなど)への影響について、東京都の被害想定は、以下のように言及しています。当該部分を抜粋します。

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・中高層住宅では、地震によりエレベーターの停止や断水など生活に支障が生じて生活することができなくなり、中高層住宅の住民は避難せざるを得ない。

・古い中層住宅では高置水槽が多いことから、これが被害を受けたときは断水となり、水道が復旧するまでには時間がかかる。

・震度6弱以上において、新耐震基準によるく体への影響の可能性は低いが、旧耐震基準の建物においては、く体に損傷が生じる可能性がある。く体に歪みが生じると、玄関ドアなどの変形により住民が拘束されるおそれがある
 
・中高層住宅のほとんどは、エレベーターの地震時管制運転装置が設置されており、この装置によりほとんどのエレベーターが最寄の階にドアを開放して停止する。その際には、保守点検要員などによる復旧作業が必要となる。また、ドア開放検知による安全装置の作動や機器そのものの破損などによって停止し閉じ込めの可能性もある

・受水槽が揺れによって損傷を受ける可能性があり、その場合には飲料水の確保だけでなく、トイレなどその排水処理も困難となる

・用途の中で我慢の可能な洗濯や風呂と比べ、トイレは比較的使用頻度が高い。このため、トイレのため遠距離まで移動することは、特に高層階の住民や高齢者にとっては大きな負担となる。また、飲料水の確保のために給水拠点まで行くことも大きな負担となる。

・実際に阪神・淡路大震災におけるマンション住民の避難した理由として最も多いのは、水道の不便によるものであった。

・エレベーターの一定期間の停止は、上記(ア)と同様に中高層住宅の住民にとって大きな負担となることが想定される。階数の低い中層住宅の住民に比べて、高層住宅の住民の方が外出に大きな支障が生じる。
 
++++++++++++++

引用した文書の中に、「旧耐震基準」と「新耐震基準」という用語がでてきました。
このうち、「旧基準」とは、1981 年6 月の耐震基準改定以前の基準を言います。旧基準に準拠して建設されたのが「旧耐震基準マンション」です。
基準改定後に建設されていれば、「新耐震基準マンション」と呼ばれます。
 
不動産情報サービスの東京カンテイの資料(http://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/57TRhisai-syuto.pdf)によると、阪神・淡路大震災に直撃されたマンション3096棟を分析した結果、新基準が適用された1981年以降の物件では中破以上が2.1%にとどまったのに対し、新基準以前の物件は4.9%と倍以上に達していました。以下、参照です。

大破 中破 小破 軽微 損傷なし 合計
新基準前 35 26 86 413 677 1237
新基準(1981年以降) 10 29 124 738 958 1859

 

大破 中破 小破 軽微 損傷なし 合計
新基準前 2.8% 2.1% 7.0% 33.4% 54.7% 100.0%
新基準(1981年以降) 0.5% 1.6% 6.7% 39.7% 51.5% 100.0%

 

古いマンションと高層階の住民は特に、注意が必要だと思います。


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