ANSHINCHILD さん
車では逃げられない [第1章「なぜ2か月なのか」]
国の中央防災会議のシミュレーションでは、「東京湾北部地震」直後に、大量の帰宅者が徒歩で道路を埋め尽くし、大混乱を招くことが示されています。
では、当ブログの関心事である、首都の物流機能はどうなるのでしょうか。
東京都が2006年に発表した「首都直下地震による東京の被害想定」では、M7.3の東京湾北部地震が起きた場合の交通網への影響を推計しています。
それによると、大被害を受ける橋梁や橋脚は一般国道1、都道8、区市町村道13の計22か所に達します。大被害とは「通行可能とする修復に長期間を要し、短期的には救助活動や緊急物資の輸送路としての機能等を回復できない程度の損傷」です。
「応急修復程度で救助活動や緊急物資の輸送路としての機能を回復できる程度の損傷」を意味する中小被害は585か所です。
また、幅員 13m未満の「細街路」では、通行が不能になる「閉塞」が東京23区の東部では荒川沿い、西部では環状7号線沿いで集中的に発生します。
つまり、物流の動脈は至る所で傷つき、一部の毛細血管は詰まってしまうのです。
この結果として、主要道路は渋滞します。
「震災時に緊急輸送の実効性を担保するため、警視庁が緊急通行車両以外の交通規制を実施する」 37 路線の緊急交通路で、平均速度が20キロ以下になる渋滞が発生します。その延長は、緊急交通路計747.4km のうち、240.8 km(約 32%)に達するというのです。
この部分は、二つの意味で重要です。
一つは、そもそも、大震災が起きれば主要道路は、規制によって、一般車両の通行ができなくなることです。つまり、短距離を除いて、自動車での移動は事実上できなくなります。
この37路線の中には、高速道路と主要幹線のほとんどが入るからです。以下のサイトに詳しいです。
中山道、川越街道、目白通り、甲州街道、青梅街道、玉川通り、第一京浜、第二京浜
日光街道、水戸街道、蔵前橋通り、京葉道路
目黒街道、 中原街道
要は、「２３区の外周部を結ぶ環状７号－国道２４６号の内側の地域は全面通行禁止とされることになっている」（産経新聞2011年6月6日、http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110606/dst11060607200002-n1.htm）のです。
もう一つは、一般車両を通行禁止にしても、なお、渋滞が避けられないということです。
東京都の想定では、「時速 20km 以下とは、緊急時においても、片側 2 車線道路の場合、1 車線が通行可能となる渋滞である」としています。
しかし、昨日紹介した中央防災会議のシミュレーションでは、2100万人の一斉移動により、幹線道路のかなりの部分は人の波で埋まります。満員電車並みの混雑度になれば、「1車線は通行可能」というわけにはいかなくなります。
東京都の想定では、鉄道網や港湾、空港の被害も見積もられています。
新幹線・JR在来線・私鉄各線の合計で、鉄道橋梁や高架橋では、663 箇所が被害を受けると推計されています。このうち、大被害は 28か所です。
大被害とは、「機能支障に至る程度の橋梁・高架橋の被害(崩壊、倒壊、耐荷力に著しい影響がある損傷)」とされています。つまり、かなり修復しないと通れなくなるほどの被害ということでしょう。
港湾では、総バース 158 箇所のうち、87か所が被害を受けるとされています。とりあえず少なくとも被災直後には輸入品の受け入れ能力が半分になるという風に解釈しています。
羽田空港については、
「B滑走路の液状化対策を終了しているが、他の滑走路は液状化対策が未実施であり、地震により使用不能となる可能性がある」とあります。
ただ、2010年10月の報道によると、「羽田は既に、Ｂ滑走路、Ａ平行誘導路、東側エプロンなどの液状化対策工事を実施済みで、Ａ滑走路と東側エプロンを結ぶ誘導路については現在、対策を実施中。今後は、Ｃ滑走路などの液状化対策工事を実施予定」（日刊建設工業新聞,web版）ということです。
こうしてみると、震災直後から、食料品を含めた物資を大量に「輸入」して成り立っている首都圏に、ものが運べなくなるリスクが顕在化していくのではないかと心配になります。
2011-08-22 16:40
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