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東京の道路が”満員電車”になる [第1章「なぜ2か月なのか」]

2008年10月に、中央防災会議の「首都直下地震避難対策等専門調査会」が公表した報告は、震災直後の首都圏に何が起きるのかをリアルにシミュレーションしています。
 
外出中に被災して帰宅を始める人数は、2100万人にも達します。このうち、自宅が遠くて徒歩で帰れない帰宅困難者数は約650万人です。
 
この膨大な数の人たちが一斉に移動や帰宅を始めた場合、電車は止まっていますから、みんな道路にあふれます。
 
  
「公共交通機関が止まり、外出先に取り残された人々が居住地に向けて一斉に徒歩帰宅を開始した場合、路上や鉄道駅周辺では大混雑が発生し、集団転倒などに巻き込まれる可能性があるとともに、火災や沿道建物からの落下物等により負傷するおそれがあるなど、大変危険な状態となる。道路の混雑により、救助・救急活動、消火活動、緊急輸送活動などの応急対策活動が妨げられるなど、混乱が生じるおそれもある。また、徒歩で帰る人々により、沿道では飲料水やトイレ等に対する大きな需要が発生する。特に沿道の避難所等では、飲料水やトイレ等を求めて徒歩帰宅者が訪れることも想定される一方で、地域の避難者も集まって来ることから、徒歩帰宅者に対して十分な対応ができず混乱が生ずる可能性もある」
  
コンピューターを使った「帰宅行動シミュレーション」(概要はwww.bousai.go.jp/chubou/23/shiryo7.pdf)では、次のようなストーリが導かれています。

千代田区、中央区、港区の都心3区や大規模な火災が起きている地区を中心に、路上の混雑度が「ラッシュアワーの満員電車の状態に近く」なります。この結果、「群集なだれが引き起こされる」恐れがでるのです。試算では、 1平方メートル当たり6 人以上になると満員電車状態となります。

さらに、この「満員電車状態」の道路を3 時間以上歩く人 は、

1都3県で約 16%(約 201 万人)
    うち、23 区出発者で約 31%(約 183 万人)
        うち、都心 3 区出発者で約 38%(約75 万人)

に達します。都心3区出発者では、満員電車状態を10時間以上我慢しなければならない人も5%近くいます。コンピューターの試算ですから、みんな我慢強く歩き続けるのかも知れませんが、生身の人間は恐らく、満員電車状態の中を10時間は歩いていられないと思います。私には自信がありません。

さて、このような大混雑の結果、自宅にたどり着くまで恐ろしいほどの時間がかかることになります。

報告書は、東京・丸の内を基点とした主要な帰宅地までの平均所要時間とその混雑度を推計していますが、それによると、

「川越街道方面の和光市(距離約 21km)への帰宅には、通常約 5 時間のところを約 15 時間かかり、そのうち約 9 時間は満員電車状態」
 
「横浜市(距離約32km)へは、通常約 8 時間のところ約 15 時間」
「さいたま市(距離約 25km)へは、通常約 6 時間のところ約 11 時間」

かかるとそれぞれ試算されています。

報告書はこのシミュレーションをもとに、
①一斉に帰宅せず、翌日帰宅や時差帰宅を行う
②家族の安否確認に要する時間を短縮する(帰宅を急ぐ理由を少なくする)
③道路の混雑状況を把握できる仕組み作り
④火災や建物倒壊が発生しないよう耐震化、不燃化を進める

などのことを提言し、特に、「むやみに移動を開始しないこと」を周知徹底すべきと結論づけています。
 
しかし、報告書から3年経たずに起きた東日本大震災の時の首都圏の混乱ぶりをみれば、徹底されていないことは明らかです。


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